糖分とエネルギーを補給して元気になった私は、ふたたびモール内を散策した。WM開催中だけあって、通
路には各国代表のユニフォームがずらりと展示され、トーナメント表や歴代スター選手の写
真パネルが飾られるなど、WMムードを盛り上げていた。
だがそれらの前で立ち止まり、パネルに書かれた文章を読んでいるのは私一人。他の人はみな、そしらぬ
顔で通りすぎていく。いくら自国でWMが開催されているとはいえ、モールに買い物にくる主婦層にとっては、WMよりも今夜の食事づくりの方が大切なのだろう。そりゃそうだ、と、私は4年前の日本の光景を思いだして納得した。
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左上 各国代表のユニフォームと、ゴールポストが並ぶ通
路。日本代表の青いユニもちゃんとあった。
右上 WMのレジェンドたちを紹介するパネル。1954年、ドイツを初優勝に導いたフリッツ・ヴァルターや、1974年優勝時のキャプテン・ベッケンバウアーなど、ドイツの英雄の写
真が並ぶ。(後の二人はペレとマラドーナ)。
あれ?1990年のドイツ優勝の時のキャプテンであるマテウスの写
真がない。他の二人のキャプテンの写真はあるのに。ひょっとして、ドイツではヴァルターやベッケンバウアーほどの人気はない?
左 今年のWMに出場するスターたちを紹介している。左からバラック(ドイツ)、ロナウジーニョ(ブラジル)
、ランパード(イングランド) 、アンリ(フランス)
。
皆、期待された割にはイマイチだった面々ですね…。
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厳しい基準をクリアした安心・安全な木のおもちゃが並ぶ店内。この棚は、乳幼児向けのコーナーだろうか。 |
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こちらは、もう少し年長の子ども向けのコーナー。ロウソクを立てて走るトレインが、いかにもヨーロッパのおもちゃという感じ。 |
壮観!ドイツの「木のおもちゃ」
パネルを見ながら通路を進んでいくと、おもちゃ売り場にたどり着いた。かなり広い売り場面
積の中で、真っ先に目についたのは木のおもちゃだった。以前、日本のおもちゃ屋を取材したとき、「ヨーロッパでは子どものおもちゃに厳しい基準を設けていて、特にドイツ製の木のおもちゃは、デザイン・質ともに優れている」と店長に力説されたことがある。あの店でも、輸入してきたドイツ製のおもちゃを売っていたけれど、確かに、子どもが成長した後はオブジェとして部屋に飾っておきたくなるようなおもちゃが多かった。
あのとき、店で見たドイツ製のおもちゃはほとんどが木製だったけど、ドイツでもそうなんだろうか?あの店の店長が、木のおもちゃばかりを好んで輸入した可能性もあるのでは…と密かに疑問に思っていたが、いざドイツのおもちゃ屋にやってきて、陳列されている商品を見てみると、「ほとんど」どころではなかった。棚一面
が木のおもちゃで埋め尽くされている。さらに見て回ると、その裏の棚も、さらに向こう側の棚も木のおもちゃであふれている。日本で取材した店にあったのと同じおもちゃもあった。
私は半ば圧倒されながら、さらに棚に近づいてみた。一言で「木のおもちゃ」といっても、種類は実にさまざまだ。乳児向けのカラフルな毛虫から、小学校低学年向けと思われるボードゲームまで、子どもの年齢に合わせておもちゃも複雑になっていくのは日本と同じだ。
だが全体的に、ミニカー、トラック、電車など、乗り物のおもちゃが多い。引っ張る、連結する、組み立てるといった基本動作が身に付くからだろうか。それとも「車大国」ドイツのお国柄が、おもちゃにも反映されているのだろうか。
そんなことを考えながら歩いていると、突き当たりの模型コーナーにさしかかった。ドイツ人も模型をつくるのかと、私は新鮮な驚きを感じながら壁一面
に積み上げられた模型の山を見上げた。だが考えてみれば、こうした根気と正確さを要求される作業はドイツ人の得意とするところだ。なんたってマイスターの国だもの、きっと素晴らしく精巧な模型を作るんだろうな。
模型の種類も、バラエティに富んでいた。スターウォーズに出てくる宇宙船など、日本でもおなじみの模型もあれば、F1とそれを取り囲むピットクルーなど、「ドイツならでは」と思わされる模型もある。だがザッと見た限り、エイリアンや怪獣など、SFファンタジー系の模型が多い。そのテの世界が好きなマニアだったら、大人でも喜んで買っていきそうな精巧さだ。箱に描かれたカバーイラストも秀逸で、いったいこの光景をどうやって模型で再現しているのだろうと興味をそそられるモノが多かった。
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ボードゲームのコーナー。パッケージのイラストを見ているだけでも面
白い。 |
子どもだけでなく、大人にも需要がありそう模型コーナー。それとも日本人と違って、ドイツ人の大人には模型作りの趣味はないのだろうか? |
アサモア侮りがたし
惜しい。アメリカに住む妹の子どもが男の子だったら、この中から一個買って、プレゼントできたのに…そう思いながら歩いていると、今度は人形売り場にさしかかった。たちまち、今度は「自分にプレゼントしたいモノ」が見つかった。
テディベアなど、動物のぬいぐるみが並んでいる棚の横に、サッカー選手フィギュアがずらりと並んでいたのだ。今までネット上でしかお目にかかれなかったサッカーファン垂涎の(というのは言い過ぎか)フィギュア「Kick-O-mania」である。ドイツのメーカーなので、もちろんドイツ代表選手が中心である。他国の選手フィギュアは、ロナウジーニョとルーニーの二人だけ。言い換えれば、この二人はドイツの子どもたちの間でも人気があるということだろう。
もちろんドイツ選手たちも、人気選手ぞろいである。並んでいるフィギュアの顔触れを見ると、今、ドイツで誰が人気があるかが如実に分かって面
白い。バラック、クローゼ、カーンらの中堅・ベテラン陣はもちろん、ポドルスキー、シュヴァインシュタイガー、ヒルデブラントら若手陣。クラニー、アサモアの「エキゾチック代表コンビ」のフィギュアもあった。日本人からみると意外だが、この二人はドイツでは結構な人気者で、サッカー雑誌などでの扱いも大きい。クラニーはブラジル、アサモアはガーナと、ともに異国の血が入っているのがエキゾチックな印象を与え、人気なのでは…と、私は勝手に推測していた。容姿だけでなく、プレーも、ドイツ人選手とは一風違った印象だし。
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並べてみると壮観な選手フィギュア。そしてやはりポルディとシュヴァイニは並べて置きたくなるらしい。
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バラックのフィギュアは「クラブ版」と「代表版」の2種類がある。…のはいいとしても、同じメーカーの同じシリーズなのに、ここまで顔が違ってて良いのだろうか。売れているのはどっちなのかも気になる。 |
この中でどれが一番売れているんだろう?と興味をそそられた私は、レジの前に歩み寄ると、レジ係の女性に名刺を見せ、写
真撮影の許可を得た。それから手振りでフィギュアの棚を指差し、
「Welches beliebt?(どれが人気なの?)」と聞いてみた。
女性は一瞬考えた後、「Podolski、Ballack、Kahn、Asamoah」と答えてくれた。おお、ポルディは地元クラブ所属だから人気なのは分かるとして、ここでもアサモアが人気なのか。やるなぁ、アサモア…と感心しながら再びフィギュアの棚に目を向ける。よく見ると、バラック、クローゼ、ヒルデブラントの三人は「クラブ版」と「代表版」の2種類のフィギュアがあった。しかも同じ選手なのに、「クラブ版」と「代表版」の顔が全く違う。きっと作った人(業者?)が違うんだろうな。バラックに関しては、代表版の方が実物に似せようと、丁寧に作られているような気がした。
あれ、バラックの隣にもう一体いる…と思ってのぞきこんだら、アサモアの代表版フィギュアだった。すぐ隣のテディベアの影になっていたため、さっきは気付かなかったのだ。ということは、アサモアも「クラブ版」と「代表版」、2種類あるということか。ほんとに人気があるんだなあ。
フイギュア売り場がある一帯は「サッカーグッズ売り場」になっているらしく、フイギュアの他にも、「ドイツ代表ジグソーパズル」や、応援グッズが売られていた。特にパズルが充実しており、現代表の他にも、過去のドイツ代表チーム(1990年のWM優勝チーム)のパズルや、サッカーボールパズルなどもあった。だが在庫数を見ると、やはり一番売れているのは現代表のパズルらしい。箱には「1000PANORAMA」と書かれていたけど、確かに完成させるとかなり横に広く、ワイドになりそうだ。
私はそれらの写真を撮った後、レジ係の女性に礼を言って、おもちゃ屋を後にした。
>>続く
「おおアサモア、こんなところに…」と思わずつぶやきたくなってしまうアサモアフィギュア。
こんな棚の端に追いやられ、テディベアに隠れてしまっているにもかかわらず、「売れている」というからすごい。
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ドイツ人はジグソーがお好き? |
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