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バラックをカカの下にもってきたのは、ドイツ人なりの遠慮なのか。それともセレソンが大好きだからか。
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店を出て、街の中心であるレーマー広場を目指して歩く。レーマー広場といえば、2002年の日韓ワールドカップ。準優勝したドイツ代表は、この広場の旧市庁舎レーマーのバルコニーから、つめかけたファンに挨拶をしたのだった。そんなことを思い出しながら歩いていると、やがて向かう彼方に、近代的な高層ビル群が姿を表した。さらに近づいていくと、その中でもひときわ高いビルから、バラックが下界を見下ろしていた。さっきはゴミ箱に捨てられていたというのに、もの凄い出世である。
ユーロのオブジェで有名な欧州中央銀行の前を通りぬけ、広場に到着。たちまち、さっきまでの高層ビル街から一転、中世の世界に迷い込んだ気分に。白壁に木組みのコントラストが美しい「ハーフティンバー様式」の建物がずらりと並ぶさまは、まさに壮観。ハーフティンバーの建築はドイツ各地で見られるけれど、これだけ大きな「館」が集まり、整然と並んでいる広場は、ドイツでも珍しいのではないだろうか。
広場には世界各国の旗が立ち並び、ワールドカップのお祭りムードを演出していた。だがこの日は暑い上に風がほとんどなく、だからせっかくの旗もだらんと垂れ下がっているのが、なんとももったいない感じがした。
それにしても暑い。太陽がじりじりと肌を焦がし、ゆっくり観光するよりも、とりあえず日影を探すという感じ。旧市庁舎の窓から、ワールドカップの公式マスコットであるゴレオ6世が顔を出していたが、その毛に覆われたライオンの顔を見るのも暑苦しいくらい。
そんな訳で早々にレーマー広場に別れを告げ、足は自然と、涼しげなマイン川へと。川の向こう側はザクセンハウゼン地区。この地区では名物のりんご酒が飲めるらしい。せっかくフランクフルトに来たのに、食べたのがマクドだけではあまりに寂しい。ここは観光客丸出しで、ザクセンハウゼンでりんご酒を飲んでみよう。
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ゴレオ6世が窓からお目見え。これ、もしかしてきぐるみ? としたら中の人はうだるような暑さでは……と、余計な心配をしてしまうほどの猛暑だった。 |
各国の旗が立ち並び、お祭りムードあふれるレーマー広場。だがその旗を見ても、風がほとんどないのがお分かりいただけるかと。 |
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マイン川の岸壁にはワールドカップ中、観覧車が設けられていた。(スポンサーはマスターカード)
それにしても、この雲ひとつないピーカン天気、空の青さよ……。
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「りんご酒は正当派のレストランではなく、居酒屋風の庶民的な店で飲める」と聞いていたので、それらしい店を探す。中心街から離れた通
りに、ちょっとうらぶれた感じの、テラスつきレストランを見つけた。テラスといっても、業務用のビジネスデスクを並べたような感じで、雰囲気は今ひとつ。だがこのいかにも安上がりのインテリアが、りんご酒を出す店のキーワードである「庶民的」に合致するように思えて、私はその店に近づいていった。親子連れがそのテラスで食事をしていたことも、私に「まあ、そんなにまずい店ではないだろう」という安心感を与えた。
遠目からはビジネスデスクに見えたそれは、近づいてみると無垢の木を貼った、ナチュラルな机だった。だがそれでも、ベルリンの高級カフェのテラスに比べ、安上がりなことは間違いない。さらに、マスターらしき人は若いお兄ちゃんで、タンクトップにジーンズ姿である。彼の方から私に気づき、近寄ってきた。私が念のため「Apfelwein(りんご酒)りありますか?」と聞くと、彼は「あるよ」と即答。私は安心してテラス席に座った。それと入れ違いに、親子連れのお客が食事を終えて席を立った。どうやら他に客はいないようだ。これは、ついでに(ついでなのか……)日経レストランWEBの取材ができるチャンス!
メニューを見ると、お酒の他にイタリア料理もあるらしい。しかも値段が安い。すでに在独日本人の方から美味しいイタリア料理店を紹介してもらって、そこで「ドイツのイタリアン(シェフはイタリア人だけど)」を体験していたが、こういう庶民的なカフェで出てくるイタリアンはどんなもんだろうと興味が湧いた。そこでまだお腹が空いていないにもかかわらず、りんご酒とともにトマトパスタを注文する。
だがこれが失敗だった。運ばれてきた料理は、パスタはパスタでも、予想していたような麺ではなくぶっといマカロニで、それ以外に具が入っていない。ソースもない。ケチャップのようなものでマカロニを絡めているだけ。確かにトマトパスタには違いないが、もっとこう、普通
にトマトの果肉が入った定番パスタを想像していた私はアテが外れた。しかもかなりのボリュームで、おまけにパンまで付いている。見た瞬間「食べきれない」と思ったが、なんとかりんご酒の助けを借りてパスタを完食。さすがにパンは食べきれず、ナプキンに包んでカバンに入れた。
きっとこういう店で、本格的なイタリアンを期待した私が間違っていたのだろう。いかにも「お酒のアテ」として楽しむための、スナックとしてのパスタ。そう思えば、このボリュームでこの値段(4ユーロだったと思う)はおトクだし、りんご酒も1.7ユーロ(約250円)と安い。タンクトップ姿のマスターは気さくでよく話してくれるし、会社のお昼休みに利用するには、ちょうどいい店かもしれない。
ちなみにお目当てのりんご酒は、初めは酸っぱいと思ったけれど、飲むうちにその酸味がクセになってきた。フランクフルトに行く機会があれば、また飲んでみたい。
>>続く