ポール・サイモンを愛する皆さんこんばんは。DJのらむこです。今夜もまた「ポール・サイモン・スペシャル」の時間がやってまいりました。
さて季節はもうすっかり秋。そして秋の夜長といえば、ポール・サイモン(決めつけ)。ポールのあの寂しげな、どこか湿った歌声は、これからの季節にピッタリですよね。という訳で思わず1句、ひねっちゃいました。

秋深し スカボロフェアでも 聴こうかな

うーん、つまらん。
俳句といえば、91年、週刊プレイボーイの「特に日本のファン向けに」行われたインタビューの中で、ポールが「僕、俳句にかなり影響を受けてるんだ。俳句はかなり読み込んだ。表現はとても簡潔だけれど、さまざまな種類の感情の表現の仕方を持っていると思う」と語っています。そのインタビューを読んで以来、私はそうした俳句の心得が生かされた歌詞っていうのかな、「俳句っぽい歌」が発表されるのを、期待して待ってるんですけどねー。
あ、でも「影響を受けた」と語ってるから、既に「俳句に影響された歌詞」というのは存在するのかも。ただ私がそうと気付かないだけで。
…しかし、月刊プレイボーイならともかく、あの週刊プレイボーイにポールのインタビューが載ってたなんて、今思うとちょっと信じられないものがありますね(笑)。「キン肉マン」とかが連載されてる同じ雑誌にポールの記事が、しかも6ページにも渡るロングインタビューが掲載されてたんですから。これが「来日直前特集!」とかならまだ分かりますけど、この時はまだ来日は決まってなかったようだし。まあそれだけ、ポールが「時の人」で、世界の音楽シーンの最先端を行っていたという事でしょうね。もちろん、今もですけど。

今夜の特集とは関係ない話をつらつら喋っちゃいました。時間もないのでさっそく本題に戻って、今夜の特集です。最初は今の季節に合わせて「秋の夜長に聴くのにピッタリな曲」特集にしようと思ったんですが、そしたらほとんどの曲…とまではいかなくとも、当てはまる曲が多すぎる事に気付いて、断念しました(爆)。
もちろん『グレイスランド』みたいに、どっちかというと「夏向き」のアルバムもあるんですけど。でも全体的にポールの曲って、S&G時代も含めて、みんなどこか「秋冬物」の匂いがします。きっとどの曲にもある種の寂しさ、孤独感みたいなものが漂っているからかもしれません。

そんな訳で急遽予定を変更して、今夜の特集は「いったい何が言いたいのか分からない曲」特集です。ポールの歌を聴く時って、誰もが一度は歌詞カードを目で追いながら聴くと思うんですけど、そうして歌詞を読んだあと、思わず「うーむ…分からん」とつぶやいてしまう、ちょっと難解な曲を選んでみました。これまでのように「この曲いいわー、素晴らしい!」と絶賛する特集ではなく、ちょっとネガティブな特集なので、もしかしたらこの放送を聞いて怒ってしまう方もいるかも(^.^;)。「分からないのは、オマエの頭が悪いんじゃー!!」と突っ込まれそうで、ちょっと怖いんですが。でも分からないからこそ、こうして特集して、リスナーの皆さんに教えてもらいたいと思ってる、かなり他力本願な特集です(^.^;)。
だってやっぱりポールの書く歌詞って、他のライターに比べると深遠で、一度聴いただけではよく理解できないものが多いし。厄介なのは、そうした一見意味不明の歌でも、ポール本人はちゃんと意味をこめて書いてるって事なんですよね。ほら、サイケで摩訶不思議なムードを出すために、わざと意味不明の歌を書くアーティストってたまにいるじゃないですか。ファンや評論家を煙に巻くために、自分でも意味の分からない、ヘンテコリンな歌詞を書いたり。
でもポールはちゃんと伝えたい内容があって、それを伝えるために歌を書いてるとファンも知ってるから、悩むんですよね。「いったいポールは、この歌で何が言いたいんだろう?」って。
「詞では絶対に妥協しない。いつも、自分が思っている事を歌にしている」と公言しているポールだからこそ、ファンはポールの思いを理解しようと、あれこれ勝手に推測したり、悩んだり。そこがまた、ポールファンの醍醐味でもあるんですけど。なので今夜の特集も、「いったい何が言いたいのか、サッパリ分かりませーん」とあきらめるんじゃなく、もっと前向きに、「これって、たぶんこういう意味?」と考えていくためのきっかけとなれば…と思って企画しました。
という訳で今夜の放送は、ぜひお手持ちの歌詞カードを見ながらお聴きくださいませ(^^)。

前置きが長くなっちゃいました。さっさと曲に行きましょうか。私の選んだ「わけわか(訳分からん)・ソング」、一曲目はやっぱりこれしかありません。どうぞ!

〜オヴィアス・チャイルド/ポール・サイモン〜

…すみません。ついさっき「前向きに」と言ったクセに何ですが、やっぱり一言叫ばせて下さい。
あーもー、いったい何が言いたいのか、サッパリ訳分かんねぇよぉーーー!!!

…ぜーぜー。失礼しました。でもちょっとスッキリした(笑)。
さて全体的に難解な歌詞の多いアルバム『リズム・オブ・ザ・セインツ』の中でも、オープニング・チューンのこの曲は特に「わけわか」だと思います。いつも歌詞カードとにらめっこしながら、なんとか理解しようとこの曲を聴くんですけど、聴き終わるといつもぼやきたくなってしまいます。「ちっとも分かんないよ、ポール…」って。
曲そのものはとっても好きなんですけどね。オロドゥンの迫力あるドラムがとにかく目立つ曲ですけど、もし彼らのドラムがなくっても全然問題ないんじゃないかと思えるほど、曲そのものに圧倒的な魅力がある。メロディーにメリハリがあって、躍動感に溢れてて。それだけに、歌詞の意味がよく分からないのが悔しいんです。大好きな曲だからこそ、いったいポールがこの曲で何を伝えようとしているのか、理解したい。
…と、長年思い続けてきたんですが、半年ほど前『ボーン・アット・ザ・ライト・タイム』というポールの伝記ビデオを見て、目が覚めました。なんでもこの曲はまずドラムありきで、歌詞はドラムのリズムに合うように、後から作られたとか。「ドラムに合うように歌詞を何度も変え続けたら、僕自身も意味の分からない曲になった」とポールが語っているのを見て、「そ、そうだったのね…」と体から一気に力が抜け落ちました。なーんだ、だったら私が理解できないのも当たり前じゃん。作った本人が、「意味が分からない」と言ってるんだから(笑)。あんなに悩んでソンしたわ…とは思わなくとも、ちょっと拍子抜けしちゃったのは事実。
と同時に、あのポールでも、自分でも意味の分からない歌を作るんだなぁ…と、かなり意外でした。「詞では絶対妥協しない」と言ってたのは、もう過去の事なの?そもそもこの発言は86年の『グレイスランド』発表時のインタビューの中で出たもので、「ダンス・レコードを目指しつつも、歌詞で何も言えないっていうのは寂しいんだ」と語っています。私はそれを読んだ時、「ああ、とってもポールらしいなぁ…」と嬉しくなっちゃったんですが。『グレイスランド』のようなノリのいい、それまでのポールの作風からは大きくかけ離れたダンス・レコードを作っても、歌詞は今まで通 り、考え抜かれた言葉で、自らの思いを表現している。「リズムこそ命」を信条に、『グレイスランド』以降はひたすらリズム主体の曲を作り続けていくポールだけど、そういう、昔からずっと変わらぬ 歌詞についての真摯な姿勢が、ファンを惹き付けて離さない大きな魅力だと思います。
――なのになのに、『グレイスランド』から4年後の『リズム・オブ・ザ・セインツ』では、とうとう「リズム」最優先になってしまって、「歌詞」は後回しになっちゃったの?と、前述のポールの発言を聞いて一瞬思ってしまいましたが。でも「僕自身も意味が分からない」と言ってるからといって、「歌詞を手抜きした」って訳じゃないですしね。きっとポールなりに考えて歌詞をつけてみたものの、全体を通 して読むと、意味の分からない歌になってしまった。「でも、それでも構わない」とポール。「ストーリー性は乏しくなったけど、より印象的な歌になったよ」――と。
ポールのこうした発言は、とり方によっては「リズム最優先で、歌詞を犠牲にした」とも取れるけれど、私はそれだけ、柔軟な姿勢で曲を作るようになった現われだと思います。…とまあ、結局ポールが何をやろうと、最終的にはみんな認めて、擁護しちゃうんですけどね(^.^;)。
最後に、私が選んだこの曲の「わけわか・ポイント」を紹介しておきましょう。

どうせ嘘は嘘じゃないかと人は言うけど
でも、だったら僕は言いたい
なぜ、明らかな子供を否定するんだ

まさにこの歌のサビの部分、繰り返し歌われるこの歌詞が一番「わけわか」だから、歌全体も「わけわか」になっちゃってるような(^.^;)。そもそも、タイトルにもなっている「明らかな子供」っていう言葉の意味自体、分からないですし。もし分かる方がいたら、どうか教えて下さいませ。
※この放送終了後、リスナーのかねしさんから、この歌についての詳しい解釈が寄せられました。「少しでもみなさんのお役に立てれば」というかねしさんのご好意に甘えて、掲載させていただく事になりました。読みたい方はこちら
※snow beautifulさんによる、この歌についての私見はこちら

という訳で私も意味が分からない、書いたポールも意味が分からないという、ある意味最強の「わけわか・ソング」である「オヴィアス・チャイルド」 を聴いていただきました。
この曲に比べると、次にお聴きいただく曲はストーリーはだいたい分かるんですが、聴き終わった時、「…な、なんで?」とぽつりとつぶやきたくなる曲です。どうぞ。

〜ナイト・ゲーム/ポール・サイモン〜

…く、暗い…(-_-;) 。 「オヴィアス・チャイルド」のように、たとえ歌詞は「わけわか」でも、メロディーが明るくリズミカルな曲は何度も聴きたくなるし、つい口ずさんでしまうんですが、この曲はちょっと…。といっても、決して嫌いな曲ではないんですけど。野球をテーマにした曲で、ここまで寒々しいムードを漂わせている曲って、長いロック史をひもといてもこの曲ぐらいじゃないでしょうか。ちょうど今、衛星でメジャー・リーグのワールド・シリーズを見てるんですけど、このアメリカそのものとも思えるダイナミックでスピード感あふれるスポーツの、いったいどこをどう切り取ったらこんな陰鬱な曲ができるんだろうか…と、ますます分からなくなってきます。そういうとこがまた、いかにもポールらしくって、ある意味誇らしく思ってしまったりもしますけど。なんかポールが鬱になってずーんと落ち込んでいる時に、作ってしまった曲…のような。
…しかし、訳分からん。という訳で、この曲の「わけわか・ポイント」。

8回裏に
ピッチャーが死んだとき
試合は同点だった

なんでいきなり、死ぬんでしょうか…。確かに野球用語って、冷静になって読み返すと、やたら凄惨な言葉が多いですけど。「刺殺」「三重殺」「狭殺」「憤死」…と、知らない人が聞いたら殺人事件かと間違えそうな言葉だらけ。もしかしたらポールも、そういうつもりで書いたのかも。実際にピッチャーが死んだ訳じゃなくって、ただヒットを打ちまくられて、マウンドから降板したと。 あ、でも、「三重殺」なんて凄惨な訳を当てはめたのは日本だけで、元々は「triple-plays」ですもんね。…じゃあ本当に死んだのか(爆)。

次行きましょ、次。今度は気分を変えて、たとえ歌詞は「わけわか」でも、メロディーは明るいものを。ときたら、これしかありませんね。どうぞ!

〜母と子の絆/ポール・サイモン〜

この歌もまた、「難解な歌」としてよく名前があがります。ポール自身も、インタビューで「あの歌詞がどこから来たか知ってますか?絶対分からないと思うな」と、さも嬉しそうに(?)、インタビュアーに自分から訪ねてます。きっと、バラしたくて仕方がなかったんでしょう。その後すぐに、「実は中華料理屋で食事をしてた時、“Mother and Child Reunion”って料理があってね…」と、自分からタネ明かしをしています。そう、ファンなら既にご存知の通 り、原題の“Mother and Child Reunion”というのは、親子丼のこと。…が、タネ明かしをしてもらってた所で、「そっかそっか、なるほどねー」とすべて解決しないところが、この歌のムズカシイところ。「親子丼の歌って、なんやねん。それと歌詞に、いったい何のつながりが?」と、かえって混乱してしまう。それぐらい、歌詞は訳分かりません。また妙にもったいぶった日本語訳が、「わけわか度」をさらにパワー・アップしてくれています。しょっぱなからいきなり、「僕は君たちに、まやかしの期待なんかは与えません」……わっかんねーよ(怒)。
あまりの訳分からなさに、つい言葉使いが荒くなってしまいました。すみません。でも誰もがこの歌詞については分かりにくいと感じているようで、前述のインタビューでも、ポール自身がその事を認めています。「そりゃそうでしょう。えらく曖昧な歌詞ですからね。えーと、実はこういう事なんです…去年の夏、可愛がっていた犬が、車に轢かれて死んだんです。僕にとっては個人的に体験した初めての死で、もしこれがペギー(当時の奥さん)だったら、いったいどんな気がするだろう?死っていったい何なんだろう?そういう思いから、詞が生まれたんです」
…ははぁ、なるほど。これでようやく、歌詞のだいたいの意味は分かりました。今まで最大のわけわか・ポイントだった、

初めてこんな低いところに寝かされて
こんな変わったやり方で
こうして人の一生は
何度も何度もくりかえすものなんです

という歌詞の意味も分かりました(たぶん)。
でもポールにここまで詳しく説明されても、それでもまだ完全には理解した気になれないんですよね。この歌に限らず、ポールの歌はほとんどがそうですが、ポールが歌の中で言いたい事のだいたいの意味は理解したつもりでも、それでもまだ何か裏があるんじゃないか、自分はまだこの歌の真の意味を理解していないんじゃないか、というもどかしさがある。
この「母と子の絆」にしたって、歌の中で何度も繰り返される「母と子の再会」とはいったいどういう意味なのか。恐らく、先に天国に行った母と、死んでからまた天国で再会する…という意味だろうとは思うのですが、それでもまだ釈然としない思いが残ります。ああもうじれったい、ポールもこんな曖昧な書き方しないで、死について書くなら、もっとズバッと、分かりやすい歌詞を書いてくれればいいのに!と、無理な注文をしたくなります(笑)。

しかし今、前述のポールのインタビューを読み返して改めて思ったことは、ポール自身がここまで丁寧に歌詞について解説している歌って、かなり珍しいんじゃないか…という事です。やっぱりそれだけ、「わけわか」度が高い歌って事でしょうね、きっと。
※snow beautifulさんによる、この歌についての解釈はこちら
※ゆーぼーさんによる、この歌についての解釈はこちら

「母と子の絆」はポールの記念すべきソロ1作目『ポール・サイモン』の、これまた記念すべき1曲目ですが、しょっぱなにこんなわけわか・ソングが入ってるという事からも分かるように(?)、このアルバムの曲はとらえどころのない歌詞がが多いです。このアルバムを聴いてから前作『明日に架ける橋』を聴くと、その歌詞の分かりやすさに仰天してまうくらい、『ポール・サイモン』の収録曲の歌詞は曖昧で、意味不明なものが多い。
という訳で次におかけする曲も、「母と子の絆」と並ぶこのアルバムの代表曲ですが、ただ「ヒットした」というだけでなく、その謎めいた歌詞から、今もファンの間で議論や推測が絶えない歌です。…と言えば、もうお分かりですね(^^)。

〜僕とフリオと校庭で/ポール・サイモン〜

今もコンサートでは必ず演奏されるこの曲、ポール自身も気に入っているんでしょう。とても楽しそうに歌っていて、見てるこっちも楽しくなっちゃう、ポールの中では珍しい歌(笑)なんですが、例によって歌詞は曖昧で、発表当時からファンの間であれこれ推測されています。特に謎を呼んでいる、この歌のわけわか・ポイントといえばもちろん、

これは法律に違反している
ママの見たものは
法律に違反しているぞ

これしかないでしょう。「ママの見たもの」はいったい何だったのか、少しオーバーな言い方をすると、「世界中のファンが、その答えを知りたがっている」と言っても過言ではありません。だって、ママがパジャマのままベッドから転げ出すほど、そしてそれを見たパパが「法律違反だ」とわめいて調査を開始するほど、過激で凄いものなんですから。歌の冒頭から巧みな状況描写 で聴衆の心をぐっとひきつける、ポールの歌詞は本当に見事ですが、結局最後まで肝心の「ママの見たもの」の正体が明かされないから、ファンはやきもきするんですよね(笑)。「おいおい、最後まで引っ張っておいて、結局謎のままかよ!そりゃないよ、ポール…」という感じ。
でもポール自身はそんなファンの嘆きを楽しむかのように、インタビューでそれについて聞かれても、いつも「さあね」とはぐらかして、決して「ママの見たもの」の正体を明かそうとはしません。「僕が想像するのは、性的な何かですね。でも僕はその“何か”が何であるか、はっきりさせる気はないけど」なーんて、ファンの神経を逆なでするような、むかつく事を言ってます(笑)。
が、そうしてむかつきながらも、やっぱりこの歌には逆らいがたい魅力があるから、どうしてもあれこれ考えちゃうんですよね。ママが見たものって、いったい何なんだろう?って。
個人的には、「僕とフリオ」のホモ行為じゃないかと勝手に推測してますが。ポールのヒント「性的な何か」にも当てはまっているし。「進歩派の牧師」が擁護するのも分かるし。でもあくまでも推測で、はっきり「これだ!」と断定できる人なんて、世界中に一人もいないんじゃないでしょうか。謎が謎を呼んで、ますます「謎めいた歌」として魅力を増していく、ある意味「魔性の歌」なのかもしれません(笑)。
※snow beautifulさんによる、この歌についての解釈はこちら

このアルバムの曲は他にも、「一見わけわか」なのが多いですが、このアルバムの曲ばかりおかけするのもアレなので、あと2曲だけ(2曲も?^.^;)ご紹介して終わりにしましょう。次の歌もいったいなんと形容していいのか、本当につかみどころのない歌です。どうぞ。

〜パパ・ホーボー/ポール・サイモン〜

はぁ〜…(ため息)。
あ、いやいや別にこのため息は、「もー、だからいったい何が言いたいわけ?はっきりさせてよね」という、怒りの混じった「あきらめのタメイキ」ではありません。それとは逆に、もううっとりと、陶酔しちゃってるタメイキなんです。もう、大好きなんですよねー、この歌。 この歌を聴いてると、いくら歌詞が意味不明でもかまわない、ポールの声とギターがあればそれでいいのよ、てな気分になります。いや基本的に、ポールの歌は全てがそうなんですけど。でも特にこの歌はそんなムードが強い。ポールも特に歌詞で「これを伝えたい」というのはなく、いつものように韻をふむ言葉を綴っていったら、いつの間にか歌ができちゃった、みたいなムードがあります。もちろんそんな事はなく、ポールなりにちゃんと考えて作った歌なんでしょうけど。でもふとそう思ってしまいたくなる、この歌ののんびりとしたムードが好き。
とはいえ、今夜の特集は「いったい何が言いたいのか分からない曲」ですから、この歌も「好きだから」と言って甘やかさず、ビシッと「わけわか・ポイント」を指摘しちゃいましょう。

ほくは学生みたいな格好してるけど
心の中は道化師なんです
それがまともな態度というやつなんです
このバスケットボール・タウンで教わった

はぁ?学生っぽいスタイルで、でも心の中はピエロなのが「まともな態度」?わかんないよ〜 (泣) <何も泣かなくても。
あと、もういっこ!

ぼくを乗せてってくれませんか
朝ご飯がすんだとこなんです
旅に出てみると
天気予報官が嘘つきました

この部分、前半の「ぼくを乗せてってくれませんか 朝ご飯がすんだとこなんです」はまあまあ意味が分かるものの、なんでその次に「旅に出てみると 天気予報官が嘘つきました」が来るのか、そのつながりが分かりません(爆)。
…んーと、まあおそらく「天気予報を信じて傘を持たずに旅に出たのに、雨が降ってきた。だから車に乗せてってよ」という意味なんだと思いますが。が、それはようく読んだら分かることで、最初はさっぱり分かりませんでした。もっと分かりやすくするなら、前と後ろを逆にして、「旅に出てみると 天気予報官が嘘つきました」の後に「ぼくを乗せてってくれませんか」を持ってくる方が、すんなり意味が通 ると思うんですけど(^.^;。でもこれがこの歌の「味」なんだから、もちろん文句は言いません。言いませんとも。

※この放送終了後に、リスナーのかねしさんから寄せられた解釈はこちら
※上記のかねしさんの解釈を読まれたyasufumiさんが、当サイトのBBSで、かねしさんと「パパ・ホーボー解釈談義」を展開されました。
※snow beautifulさんによる、目からウロコの新解釈もどうぞ。

という訳で、いよいよ「わけわか・アルバム(勝手に命名)」『ポール・サイモン』から最後の曲となりました。これも先程の「パパ・ホーボー」と同じく大好きな歌なんですが、歌詞は「パパ・ホーボー」以上に意味不明で、何度読み返してもよく分かりません。

〜休戦記念日/ポール・サイモン〜

この曲はタイトルだけ見ると、ポールにしては政治的な歌という感じがして、いったいどんな歌だろとちょっと期待して聴いたんですが…。案の定というべきか、そういう期待は見事にはぐらかされました(^.^;。あからさまに政治的なメッセージはどこにもなくて、最初は「はァ?」と思うけど、でもよく読むと、それとなく政治的。きっとこれが、ポールのスタイルなんでしょうね。後年の『グレイスランド』論争の時にポールが何度も語っていた事ですが、「ぼくは政治を書くライターじゃない」ということ。かといって、全く書かないわけでもない。「潜在意識の中から曲が生まれてくるんだ。その中に政治的なものが含まれていたら、それはそれでけっこう。でも最初から、『政治的な歌を書こう』と思って書くことはない」。この発言は、『グレイスランド』の中でも特に政治色が濃いと言われている「ホームレス」についての発言ですが、これはそのままこの「休戦記念日」にも当てはまるような気がします。

しかし…分かりやすい「ホームレス」はともかく、この「休戦記念日」は歌詞が遠回しで、分かりにくい。「政治的な匂い」のする歌だからこそ、どんなメッセージが込められているのかちゃんと理解したいのに、分からないから、余計にイライラするんですよね(^.^;。そういう意味では実にやっかいな、ファン泣かせの歌と言えそうです。
という訳で恒例のわけわか・ポイント。

休戦記念日
休戦記念日
ぼくが本当に言いたいのは
それだけなんです

だーかーらー、あなたが「本当に言いたい」のは何なのか、こっちはちっとも分かんないんだって!と、半ばキレ気味に言い返したくなる(^.^;。「母と子の絆」と同じく、この歌もタイトルの「休戦記念日」がいったい何を意味してるのか分からないから、歌そのものが難解に感じられます。本当はもっと、単純な歌なのかもしれないですけど。でもお馬鹿な私には理解できない… (泣) 。
※snow beautifulさんによる、この歌についての解釈はこちら

そうそう、タイトルからして「意味不明」といえば、次におかけする曲なんか、まさにその代表格じゃないでしょうか。

〜オール・アラウンド・ザ・ワールドあるいはフィンガープリントの伝説/ポール・サイモン〜

歴史的名盤(と、言いきってしまおう)『グレイスランド』のトリを飾るこの曲は、あのロス・ロボスとの共演や、その後の盗作疑惑にまつわるゴタゴタの方に目が行きがちで、歌そのものに触れているレビューにはほとんどお目にかかりません。それってやっぱり歌詞が意味不明で、どういう風に解説したらいいのか、評論家ですら分からないからじゃないか…なんて、勝手な推測をしたくなります。それぐらい、チンプンカンプンな歌詞です。私にとっては。
そもそもタイトルからして、「なんじゃそりゃ」と言いたくなります。し、指紋の伝説…?まあいいや。タイトルは意味不明でも、歌詞を読んだらだいたいの意味は分かるだろう…と気を取り直して歌詞を読んでみると、さらに訳分からなくなるという、まさに手の施しようがないわけわか・ソング。<そこまで言うか(笑)。
ぜひともポール自身に、いったいこの歌で何を言おうとしているのか、聞いてみたいものです。だって歌詞すべてがわけわか・ポイント満載で、いったいどう紹介したらいいのか… (泣) 。
でもまあ、とりあえず選んでみると、

疑問の余地は何もない
それは指紋の神話
そのためにこそ昔の軍の駐屯地があったはず

「疑問の余地は何もない」って、そんな自信たっぷりに言い切られても、こっちはサッパリ訳分かんないんですけどー? (^.^;

それから、これはいつも番組を聞いてくださっているようこさんが指摘してくれた、わけわか・ポイント。

お陽さまは疲れて
お陽さまは沈む
スイカ以来ずっと
そして闇につつまれた炭坑町に火がともる

「この歌が大好き」とおっしゃるようこさんですが、それでもこの歌は「わけわか」で、特にこの部分が一番訳わかんないそうです。な、なんでスイカなの?と、このレコードを買った中学生当時は泣きたくなったとか。そして今でもやっぱり訳わかんないとのこと。
いたいけな女子中学生を涙ぐませてしまうほど、訳の分からんポールの歌って、いったい…(爆)。もちろん私も訳分かりません。元々の英語の詞では「watermelon」となってて、やはりあの果 物の「スイカ」としか訳せないんですよね。「スイカ以来、ずっと…スイカ以来、ずっと…スイカ以来…」…はぁぁぁ、私も泣きたくなってきました(;_;)。
…ダメだ。この歌のどこがどう分からないか書こうとしても、それすらも分からないや(爆)。もうこの歌は私の理解可能な知的レベルを遥かに越えてます。今までご紹介してきた歌のように、「よく分からないけど、たぶんこういう意味では…?」と推測する事すら不可能。歌の最後、元トーク・ショーのホストのセリフ、

疑問の余地は何もない
それは指紋の神話
だからこそ我々は一人で生きることを学ばねばはらないのだ

も、恐らくポールはこの歌を締めくくる決め台詞のつもりで書いたんだろうけど、その意図する所がさっぱりつかめません。逆に、

疑問の余地は何もない
この歌は訳わからん
だからこそ我々はポールにその意味を問いたださなければならないのだ

と言い返したくなります。はー。
同じ『グレイスランド』の中では、「コール・ミー・アル」の歌詞も私にはイマイチ分かりにくいんですが、でもこの「オール・アラウンド・ザ・ワールドあるいはフィンガープリントの伝説(長い…)」に比べると、遥かに分かりやすい。まさに「キング・オブ・わけわか」の称号にふさわしい歌と言えましょうか。
…と書くと、なんだかさっきからけなしまくってるように見えますけど(^.^;。でもこの歌そのものは好きです、とっても。でもそれとこれとは別 問題。全然分からない歌なのに、さも分かったようなフリしてもっともらしい事書くのも嫌だし。分からないなら分からないと、はっきり言うのも潔いでしょ?(^^ゞ

※この放送終了後に、リスナーのかねしさんから寄せられた解釈はこちら

しかしここでふと振り返ってみると、今までおかけした歌はみんな、見事にソロになってから書いた歌ばかりですね。やっぱりS&G時代の歌って、今読み返してみるとずいぶん(ポールにしては)分かりやすい歌が多いし。やっぱり年を取るにつれて、思想が深遠になっていくものなんだなぁ…と思いつつS&Gアルバムの歌詞カードを眺めていたら、肝心な歌を忘れていた事に気付きました。これぞポールの「わけわか・ソング」の原点とも呼べる歌を。
…と言ってる間に、もうあの、おなじみのイントロが流れてきました。それではどうぞお聴きください。

〜サウンド・オブ・サイレンス/サイモン&ガーファンクル〜

おいおい、いったいこの歌のどこが「わけわか」なんだよ!アンタそれでもポールファンか?!と怒る方がたくさんいそうで怖いんですけど(^.^;。でも皆さん、初めてこの歌を聴いた時のことを思い返してみてください。歌詞を読んですぐ、「なるほどなー」と理解できた人って、ほとんどいないような気がするんですけど、どうでしょうか。
もうあまりにも有名な歌なんで、ファンなら誰でもこの歌の伝えたいメッセージは熟知していて、今さら「“沈黙の音”って、ナニ?なんかすっごく矛盾してないか?その言葉」と、初心者丸出しの疑問を発するものはいないですけど。いや、例えいたとしても、そんなの恥ずかしくて、誰も口にできないというか。
でも例えいくら有名でも、厳密に分類するとしたら、この歌は「わけわか」な部類に入ると思います。もちろん今では私も、ポールがこの歌にこめたメッセージは理解してますけど。でも難解な事には変わりがない。タイトルの「沈黙の音」からして、何も知らない人が聞いたら「意味不明」だと思うだろうし。
またこの歌が初めて収録された『水曜の朝、午前3時』のライナーで、アーティも書いています。「この歌は謎のままで終わっている」と。
あの聡明なアーティでさえそう思っているのだから、私も勇気を奮って(?)、この歌のわけわか・ポイントを指摘しちゃいましょう。

言葉の形になったネオン・サインは
警告をひらめかせていた
「預言者の言葉は 地下鉄の壁や
安アパートの廊下に書かれている」

ついさっき「今では理解してます」と書いたくせに何ですけど、いまだにこの個所だけは、ちゃんと理解したとは言えません。雰囲気はなんとなく分かるんですけど、はっきりとした答えは見つからない。ポールが何を言いたいのか…。彼が若干22才の時にこの歌を書いたのかと思うと、この年にもなってもまだちゃんと理解できない自分がアホすぎて、情けなくなってきますけど。でもまあ、ポールと自分を比べる事じたい、「わけわか」なのかもしれませんね(^.^;。

※この放送終了後に、リスナーのハラダさんから寄せられた解釈はこちら
※リスナーのなしぐりさんから寄せられた、聖書からひらめいた新解釈もどうぞ

続けて、S&Gからもう一曲おかけしましょう。この曲はそれほど「わけわか」って事はないんですけど、「えっ、なんでなんで?」とつい突っ込んでしまいたくなる歌です(笑)。

〜スカボロー・フェア/サイモン&ガーファンクル〜

この歌はとにかく2人のハーモニーが美しく、もうそれだけで十分すぎるくらいなんですけど、歌詞は意外と複雑ですよね。単純なラブソングかと思いきや、ところどころに別 ストーリーの歌詞が挟み込まれている。『ソングブック』に収録されている「ザ・サイド・オブ・ア・ヒル」という歌の一部分だそうですが、本筋の歌詞も一筋縄ではいきません。という訳でわけわか・ポイント。

木綿のシャツを作ってと伝えておくれ
パセリにセージにローズマリーにタイム
縫い目も針のあともないように
そうすれば彼女は本物の恋人になるだろう

このパターンが3番まで繰り返されるんですが、みんな、「えっなんで?」と思うような理由なんですよね(笑)。ちょっとはしょって書き出すと、
「海水と波打ちぎわの間の1エーカーの土地を見つけてくれたら、彼女は本物の恋人になるだろう」とか、
「皮の鎌で収穫を刈って、ヒースの束にまとめてくれたら、彼女は本物の(以下省略)」とか。
言うだけ言って、なぜそうなのか、という説明がない。なんて自己中な男なんだ(笑)。言われた「彼女」の方は、きっと戸惑ってしまう事間違いなし。「そんないきなり、『1エーカーの土地を見つけてくれ』と言われても…。しかも『海水と波打ちぎわの間』って、そんな無茶な」と、私なら思いますね。で、もうそんな男の事は忘れる、と(笑)。
しかしこんな自己中な歌詞でも、S&Gの美しいハーモニーで歌われると、もううっとりと聞き惚れてしまうから不思議です。情感豊かな歌声が、元々の歌詞を何倍もイメージ豊かに広げてくれるという、まさに見本のような歌。でも歌詞だけ読むと、かなり自己中(笑)。

※この放送終了後に、リスナーのsnow beautifulさんから寄せられた解釈はこちら

おかけした2曲の他にも、S&G時代の歌で「わけわか」なのはあるかなー、と1通 り歌詞カードに目を通しましたが、ないですね…。
という訳でさっさと見切りをつけて(笑)、ソロ時代に戻りましょうか。今も継続中のソロ時代では、年を重ねるごとにますます歌詞に深みが増していくのは当然といえば当然で、最新作『ユー・アー・ザ・ワン』の収録曲なんか、一度読んだだけではとても理解できない、深遠な歌詞ばかり。でも「深遠=本当に理解するまでは意味不明」でもある訳で(笑)。今も歌詞カードを凝視しながら、どの曲が一番難解だろう、どの曲を番組でおかけしようか…と試行錯誤してるんですが、選ぶのはほとんど不可能。だってこのアルバム、「すぐ理解できる歌」を探す方が難しいんだもの(^^ゞ。
よって考えた結果、今回はこのアルバムからの曲はおかけしない事にしました。だって、今の私にはほとんどの曲が「わけわか」で、とても選べません。それもそのはず、このアルバムは買ってからまだ1年ぐらいしかたっていないから、まだまだ歌詞を十分に読み込んでいない。だからよく意味が分からないのも当然で、そんな状態で「この曲って、訳分かんないよねー」と、この番組で吊るし上げる(爆)なんて事はしたくない、と。やっぱりポールの歌は、何年もかけてじっくりと歌詞を読み込んでいって、初めてその本当の意味が分かる事も多いと思うし。最新作の『ユー・アー・ザ・ワン』では特にその兆候が強いので、今回はパスします。ごめんなさい。<逃げたな…。

という訳で、体のいい言い訳をかまして『ユー・アー・ザ・ワン』をスルーした私ですが、実は買ってからもう10年以上たつのに、いまだに歌詞の意味がよく読み込めていないアルバムがあります。なので『ユー・アー・ザ・ワン』も、今から10年たってもまだ理解できない可能性もあるんですが、それはまあ置いといて。その「10年たっても、まだ理解できない」アルバムとは、他でもない『リズム・オブ・ザ・セインツ』なんですよ。
このアルバム、最初に聴いた時にはとにかく全編に渡ってドラムやボンゴ、その他の多種多様な打楽器が目立つ、典型的な「リズム系」アルバムのようですが、ふと歌詞カードを見てみると、なんとも意味深で味わい深い歌詞がてんこもり、なんですよね。その証拠か、このアルバムはコアでディープなポールファンの間で異様に人気が高いです。これは私もびっくりした事なんですが、同じサイモン流ワールド・ミュージック・アルバムでも、『グレイスランド』よりこっちの方が好き、という人がとても多いんですよね。といっても一般 的な人気や評価は、グラミー受賞アルバムでもある『グレイスランド』の方が上なんですけど。でもなんていうのかな、よりマニアックなポールファンの間では、『リズム・オブ・ザ・セインツ』の方が評価が高い。
それはなぜか。色んな理由が考えられるけど、大きな理由の一つとして、「歌詞の素晴らしさ」があげられると思います。もちろん『グレイスランド』に入っている歌の歌詞も素晴らしいけれど、『リズム・オブ・ザ・セインツ』の歌詞の方がより難解で、聴き手によっていろんな受け取り方ができて、その分、ポールファン受けする要素が高いような気がします。別 に「ポールファンは、より難解な歌詞を好む」という訳じゃないですけど。でもこの放送の最初の方でも言ったように、難解な歌詞を読んで、ああだこうだと推測するのも、ファンにとってはかけがえのない楽しみなんですよね。ある意味、ポールファンの醍醐味とも言えるかも。
またこれは、後からインタビューを読んで知った事なんですが、このアルバムの歌詞は、詩人で劇作家のデレク・ウォルコットの影響を受けているらしいんですよね。ポール自身がそう語ってます。「彼のカリブ海的な“場の感覚”、実に素晴らしいんだ」と。自分の言葉では言い表せない“場の感覚”を得るために、ウォルコットの詩に頼ったと、はっきり語っています。
ポールほどの作家が、他の作家に影響を受けて、しかもそれを素直に認めるのって、実は凄く珍しい事のように思うんですけど。フツーはいくら影響を受けても、大物になればなるほど変なプライドが邪魔して、素直に認めたがらないものなのに。でもポールはそれを認めて、自分からデレク・ウォルコットの名前を出して、彼の詩がいかに素晴らしいか紹介する。それだけウォルコットの詩が気に入っているという事もあるんでしょうけど、たとえどんなに影響を受けようと、自分の詩の根本的なものは変わらないという、確固たる自信があるからでしょうね。
だから柔軟に、メロディーでも詩でも、気に入ったものはすぐに受け入れて、しかもただ真似するだけでなく、それを完璧に自分のものにしてしまう。ポールのこういうとこ、私はとっても好きです。
…が、しかし。「デレク・ウォルコットから影響を受けた」と明言しているだけあって、このアルバムの詩はそれまでのポールの詩とはちょっと雰囲気が違ってます。どこがどう違うのか、口ではうまく説明できないんですけど。でも「“場の感覚”が素晴らしい」と言っているだけあって、今までの歌に比べて、より「状況描写 」が多くなってるように思います。そしてその事と関係してか、より分かりにくくなってます。1番分かりにくいのはなんといっても今夜の放送の冒頭におかけした「オヴィアス・チャイルド」ですが、その他の歌もかなり難易度が高い。その中でもとりわけ「わっかんねーよー」とぼやきたくなる曲を2曲、聴いていただきましょうか。ではまずこの曲から、どうぞ。

〜シー・ムーブズ・オン/ポール・サイモン〜

いきなりですが、この曲の「わけわか・ポイント」は、ずばりココです。

彼女は言う
「ああ、私の物語の恋人よ
あなたは私の力を軽んじてることを
じきに思い知るでしょう」

すると僕はひざまずき
すっかり力を失ってしまう
まるで彼女が僕の声を
ビンに詰めてしまったかのようだ
僕にはそれを取り返す事ができない

…余談ですが、このサイト「Still Crazy」の目次ページのイラストは、ここの歌詞がモチーフになってます。「ビンの中に閉じこめられた、ポールの声」を絵で表現したつもり…のくせに、実は歌詞の意味をよく理解してなかったりするんですよね(^^ゞ。
まず「物語の恋人」というのが何なのか分からない。で、なんで彼女にそう言われたら、「僕」は急に力を失ってしまうのか。たぶん、「物語の恋人」って具体的な何かを暗示してると思うんですけど。うーん… (-_-;) 。

いくら悩んだところで理解できないので、ここはサクッとあきらめて、次の歌にいきましょう。これもファンの間では人気が高い曲で、ポールのコンサートの定番ともなってる曲です。

〜クール、クール・リヴァー/ポール・サイモン〜

この歌の歌詞が好きな人って、多いですよねー、国籍問わず。でも私にはさっぱり理解できません(泣)。みんながちゃんと理解して、「素晴らしい!」って言ってるのに、私はちーともその素晴らしさが理解できない以前に、何を言ってるのかすら分からないのって、凄く悔しい。で、なんとか理解しようと歌詞を読めば読むほど、分からなくなってしまう。
特に分からないのが、以下の歌詞です。

愛のあらしが心の中の
献身の祈りに向けられる
それらの祈りは荒野に
途切れることなく続く道だ
それらの祈りこそ神の追憶

うーん…。なんかとっても、深いことを言ってるっていうのは、分かるんですけど。でも深すぎて、分からない…(泣)。こんな歌詞を読んで、「うむ、なるほど」とすんなり理解できる人が羨ましいです。ほんと尊敬してしまう。
あともういっこ、これも外せない「わけわか・ポイント」は、

町の通りは
眠る軍隊のように静かで
押しつぶされた夢を天国に送っている
落ちつきのないママの坊やたちのために
ママの坊やたちは証人であり、兵士であって
すべてを打ち破って走り出したい衝動を否定する

あははははは(^○^) 。もうここまでくると、笑うしかないですね。ぜーんぜん意味わっかりっませーん!\(^o^)/ <壊れた…。

……もうダメ。なんとか理解しようと、努力するのも疲れました…。
「別にそこまで苦労して理解しようとしなくても、いいじゃん」と思う人もいるかもしれませんが、ポールファンとしてそれは許せない。…というのはちょっと大げさですが、それだけポールの歌って、歌詞がとても重要なんです。歌詞の意味をちゃんと読み取って、よりポールの心情に近づきたいと思ってしまう。もちろん彼の真意を全て理解することなんて不可能だけど、それでも少しは理解したいと願う、この切ないファン心理。と同時に、ちょっとやそっとじゃ理解できない歌を書くポールがまぶしくて、「やっぱ、すごいな〜」と素直に嬉しく思ってしまう。そんじょそこらのソングライターなんか足元にも及ばない深遠な歌詞を見ると、「へへん、どーだ。やっぱりポールは凄いだろ」と、自分が書いた訳でもないのに、なぜか優越感に浸ってほくそ笑んでしまうから不思議なものです。私も今夜の放送でさんざん「わかんねーよ」とぼやきましたが、心のどこかで、そういう、「凡人には理解できない歌を書くポール」に惹かれてるのも事実。なので今後もポールには、「誰にでも分かる歌を」なんて心改めないで、凡人には及びもつかない崇高で深遠な歌を書き続けていってほしいものです。
そう、ポールの何がカッコイイかって、「万人に理解されたい」なんてハナから思ってなくて、「分かる人だけ分かればいい」って感じで書いてるところですよね。そういう、ちょっと高飛車で孤高な姿勢を貫いてこそ、ポール!ますます惚れ直したわ!…と、最後は今までの分を一気にフォローしようと持ち上げてみました(笑)。――でもほんと、そうですよね。大衆の理解を求めて、分かりやすい歌を書くポールなんて、そんなのもうポールじゃないもの。

さて、そう言ってるうちにもう放送時間が終わりに近づいてきました。お送りしてきました今夜の放送、いかがだったでしょうか。なんだか今夜は今までの放送よりずっと、難しかった気がします。やっぱり単純に「この曲ええわー」と誉めそやす特集の方が、ずっと簡単。でもまあ、たまにはこんな風に、ポールの歌に突っ込む…という程ではないけど、違った角度から眺めてみるのも面 白いかと。
今夜の放送を聴いて、「こんな歌詞も理解できないの?おまえホンットに頭悪いなー」と思われた方、きっとたくさんいると思いますが、そういう方はぜひご意見をお聞かせください。今夜の放送でおかけした曲の、この歌詞は実はこういう意味なんだよと、教えていただけたら嬉しいです。宛先は当番組のBBSか、sheep11★yb3.so-net.ne.jp (★を@に書き換えてください)まで。

それではまた、次回の放送でお会いいたしましょう。さようなら(^o^)/~~