女をたぶらかす50の方法

 

「たぶらかす」なんて、ポールには最も似つかわしくない言葉をタイトルにつかってしまったけれど(笑)。でもポールってああ見えてけっこうスケコマシ…いや、女性遍歴が豊富なんだよね。まあ金持ちの有名人だからモテる、というのもあるだろうけど。
でもここでは、そんなポールの華麗な女性遍歴を辿ってみる――なんていう、しょうもない事はしない。そんなもん、勝手に好きな女とくっついてりゃいい。ただしもうキャリー・フィッシャーは勘弁してほしいけど(笑)。

さてネットを始めてから知った意外な事実に、ポールと女性ファンの関係がある。それまでずっと、私は女性ファンに人気があるのは圧倒的にアーティで、ポールファンはごく一部のギターマニアだけだと思っていた。でも違うのだ。ポールには、意外と女性ファンが多いのである。で、アーティには意外と男性ファンが多い。…とかなんとか、ついなんでもアーティと比較しまうあたり、私もダメだなあと思うけど。
でも意外だった。特にポールに女性ファンが多いというのが。チビで陰気でひねくれていて、どう見ても女性にモテそうなタイプには見えないのに。なーんて、書いてる私も女なんだけどさ(笑)。でも私は今までいつも少数派で、他の誰とも好きなタイプがかぶらなかった。「あんな男、どこがいいの?」という人ばかり好きになってきた。そんな私がファンになったポールだから、彼も当然、「あんな男、どこがいいの?」と他の女性から思われているだろうと勝手に思い込んでいたのだ。
が、そうじゃなかった。繰り返すけど、ポールには意外と女性ファンが多い。いやもちろん、男性ファンも同じくらい多いんだけど。でも全体的に女性ファンの方が熱心なのだ。具体的に言うと、アメリカをはじめ世界各国のポールのファンサイトの管理人には女性が多い。まあ女性の方がマメだから、サイトを作ったり更新するのに向いてるからかもしれないけど。
でも管理人だけじゃなく、掲示板の書き込みなども女性の割合が多いような気がする。そして…これが私が1番驚いた事なんだけど、それら女性ファンの多くは、ポールを男としても愛していて、結婚したいと思っているようなのだ。え〜っ!マジで〜っ?!

これには本当にびっくりした。同じファンでも、私とは違う。私はこんなサイトを作る位 だからさぞかしポールにラブラブなんだろうと思われているかもしれないけど、違います(キッパリ)。私はあくまでもアーティスト、クリエイターとしてのポールに惚れているのであって、1人の男としてはぜーんぜんタイプじゃない。だから結婚したいなんてもちろん、つきあいたいとも、個人的に親しくなりたいとも思わない。あくまでも一ファンとして、遠くから眺めていたい。だってポールってどう見ても社交的なタイプじゃないし、もし実際に会って嫌な印象を持ってしまったら、彼の音楽まで嫌いになりそうで怖いのだ。
でも私のようなファンは、もしかしたら少数派なのだろうか。他の女性ファンはみんな、ポールと結婚したいと思ってるの?マジで?あんなつきあいにくそうな、一日中音楽の事ばかり考えていて、家事なんか絶対手伝いそうにない自己中な男と?<ボ、ボロクソや…(笑)。
そういえば自分のバスルームの壁にポールの写真をべたべた貼りまくってる女性もいたけど、彼女などはやっぱり「ポールに抱かれたい」と思っているんだろうか。うーん…(◎_◎) 。
私は1度も「抱かれたい」なんて思った事はないなあ。「いじめたい」と思った事はあるけど(爆)。もちろんいじめると言ってもどつきまわすとかじゃなくて、精神的にね。だってほら、ポールって傷つけられたりしてヘコんでる時の方が、それをバネにして凄い名曲を書くような気がするから。だからあえて悪役を引き受けて、「最近のあんたってもうすっかり落ち目ね。やたらこ難しい歌ばっかり作ってるからじゃないの?もっと昔みたいに単純な、誰にでも受ける大ヒットソングを作ってみれば?」と心にもない事を言って、ポールの顔をひきつらせてみたい。<サドか、私は。

そんな訳でどちらかというと「いじめたい」派の私としては、「抱かれたい」派の方達の心情はちょっと理解できない。彼女達はポールのあの胸毛にセックスアピールを感じて、うっとりしたりしてるのだろうか?……ははは(力のない笑い)。
まあ単に日本人と欧米人の気質の違いかもしれないけど。日本のポールファンで、あんなにおおっぴらにポールへの愛を語って、「結婚したい」と言ってる人なんて見た事ない…と書いたすぐ後に、思い出した。いたよ、そういう人。ポールの性をペンネームにしてしまうほど大ファンの、某「恋愛の教祖」様が。
…と書くと、なんだか嫌みな書き方になってしまって申し訳ないけれど。ただ私はあまり彼女の絵が好きじゃないので、1度も漫画は読んだ事がない。でも彼女のエッセイは読んだ事がある。といってもほんの一部、エッセイ集「男性論」の中でポール・サイモンについて語っている回だけだけど。
それももう10年以上前に1度読んだきりなので、記憶があやふやだけど。でも今でもはっきり覚えているのは、「恋愛の教祖」様はポールを男としても愛していて、「やはり私は結婚する相手を間違えた。今の旦那と出会う前に、彼と出会うべきだった」とはっきり書いていた事だ。おいおいマジかよ、とそれを読んで思った。当時すでにポールのファンだった私だけど、そういう愛し方はしていなかった。なのに自分より遥かに年上で、有名人で、しかも旦那も有名漫画家なのに、そういう事をはっきり書いてしまう彼女の愛の純粋さというか、ポールへのひたむきな愛情に面 食らったのだ。
と同時に、ここまで言わせるポール・サイモンの魅力って、いったい何だろうとふと思った。アーティストとしての彼の魅力は、私でも分かる。でもアーティストを離れた、1人の男としての彼の魅力って?女性ファンは彼のどこに惹かれて、「結婚したい」とまで思うのだろうか。
…もしかして、顔かしら?いやそれは違うな。彼のルックスに惚れてファンになる人なんていないだろ。…あ、決して不細工だと言ってる訳じゃないですよ。「声や曲はステキなのに、顔を見たら幻滅した」と言われるアーティストはたま〜にいるけど、ポールは決して、曲のイメージをぶち壊すほどひどいルックスはしていない。していないけど、「まずルックスに惚れて、ファンになった」という人はたぶん皆無だと思えるほど、ごくフツーの、どっちかというと地味な顔立ちだし。
そういえば女は何かを好きになる時、頭じゃなく感覚で好きになるとよく言われる。私もそれはなんとなく分かる。頭じゃなくって、かといって心でもない。もっと女独特の本能のようなもの…例えるなら、「子宮」にズキン!と響いてくるような人に惚れるのだ。
ポールに女性ファンが多いのも、彼の中の何かが、女の子宮に訴えるからだろう。そう思った時、真っ先に前述の、「恋愛の教祖」様のエッセイが思い浮かんだ。とたんに、これだ!と思い当たった。―――そう、キーワードは「少年」である。教祖様は、そのポールについてのエッセイの中で、「いつまでも少年の心を持った」ポールを愛していると語っていた。思い返せば、彼女はこれまでも色んな雑誌でポールの魅力について書いているが、いつも必ず「少年のような」という形容詞が出てくる。最近ではポールのニューアルバム「ユー・アー・ザ・ワン」についての感想を某誌で語っていたが、そこでも「傷つきやすい少年の心のまま、初老に達したポール」という文章がしっかり入っていた。ここまで何度も繰り返されると、分かりやすい。そうか、彼女はポールの「少年のような」部分に惹かれているのか。で、ふと気付いてこのサイトのために書いた私のひとりごとを読み返してみると、あらまあ。私もしっかり「少年のような」という形容詞を使ってるじゃん(笑)。それも1度だけじゃなく、何度も。 なーんだ、私も教祖様と同じで、ポールの「少年のような」部分に惹かれてるってこと?確かにそれは一理あるかもしれない。だからといって、「結婚したい」とは思わないけど。

でも確かに、ポールには「少年のような」というイメージがついてまわる。少年といっても決して元気いっぱいの無邪気な少年ではなく、むしろその逆で、世間に馴染めず、暗やみだけが話し相手の孤独な少年。特に初期の歌にはそんなイメージが強い。社会への苛立ちや人間関係のはかなさを歌った歌が多いけど、決してそれらを大声にがなりたてるのではなく、ささやくような歌声で美しく歌いあげるところが、「社会に対しておずおずと、でもしっかりした意志をもって自分の意見を述べる利発な少年」というイメージにつながったんだと思う。少なくとも、私にはそう思えた。
あと、やっぱりあの外見も関係あるだろうと思う。ただ背が低いというだけじゃなく、ロックスターにしては珍しく真面 目で、ドラッグにも手を出してなさそうな清潔なイメージが、「汚れた大人の世界に染まっていない少年」に見えたのでは。

ここまで書いてみて、じゃあやっぱり他の女性ファンの皆さんも、ポールの「少年のような」部分に惹かれているのかなあと思えてきた。そしてそういう部分に惹かれる彼女達自身も、いつまでも少女のような心を持った、ピュアな女性なんじゃないだろうか。だからポールの歌に心惹かれて、魂を響かせあう事ができるのだ。―――なーんて、書いてる私には到底当てはまりそうにないけれど(^.^;)。
あと、ポールのあのちょっと自閉的ですぐ落ち込みそうなところも、「かまいたくなる男」として、あれこれ世話を焼きたくなるのかも。最近のポールの服のセンスがあまりにも悪いので、「スタイリストになってあげたい」と思っている女性ファンが、世界中にたくさんいるようだし(笑)。

あと自分にもあてはまる理由として、女って男の才能に惚れると思う。たとえ見た目はどんなにサエなくても性格が悪くても、ずば抜けた才能を持った男には無条件で惚れてしまうとこがある。そんな男はいくら性格が傲慢で自己中でも、それは自分の才能に自信を持ってる証拠だからと、かえって「頼もしい男」に見えてますます惚れてしまうのだ。だからポールが陰で「気まぐれな独裁者」と噂されていると知っても、また実際にそんな風に見える時があっても、それで嫌いになったりする事はない。「それだけの才能があるんだから、当然」とすんなり許してしまうのだ。

…とまあ、思いつくままにあれこれ理由を書いてきたけれど。でもやっぱりポールに女性ファンが多い最大の理由は、なんといってもその曲……特に歌詞に心惹かれるからじゃないだろうか。と言い切れるぐらい、ポールの書く詩って明らかに女性好みだと思う。女流漫画家、それも特異な作風で知られる個性的な作家がポールの詩をよく自分の作品の中で引用するのも、彼の詩が女性の共感を得ている証拠だろう。丁寧な美しい言葉で心の内面 を静かに綴っていく作風は、女性の心の琴線に敏感に響く。だから逆に男性からは「物足りない」「いい子ぶってる」とか思われるんだけど。確かに力強いメッセージをぐいぐい押しつけるようなタイプではない。その決して押し付けがましくないところもまた、女性に好かれる一因だろう。「分かってもらえないならそれでもいい。僕は無理に自分の考えを他人に解らせようとは思わない」とはポール自身の言葉だけれど、こういう控えめなところが彼の魅力でもあり、また物足りない点でもある。その偉大なキャリアの割には威圧感というものがほとんど感じられないと言われるポールだけど、それは彼の控えめで恥ずかしがりな性格も影響しているのではないだろうか。でもそんな普通 っぽいところが、女性ファンに限らず、多くのファンから愛されているゆえんでもあると思うんだけどね。ほんとは凄い人なのに、見た目は全然そんな風に見えないとこがいいのだ。いわゆるカリスマってやつが全然ないところが、私には愛おしくてたまらない。「ポール、今度の新作すっごくいいよ!」と気軽に肩を叩けそうなところが。

またポールの歌詞といえば、個人的にはあの「ニューヨークの少年」が、女性ファンを増やした一因じゃないかと思っている。あの歌に秘められたエピソードを知って、ホロリときた女性は多いはず。「自分を見捨てて飛び立っていったアーティにこんな優しい言葉をかけるなんて、ポールってなんていじらしいの」ってね。なーんて、書いてて自分でもちょっと気持ち悪くなってきたから、もう終わりにしよ(^.^;)。
とにかくひとつ言えることは、ポールを 愛する女性ファンは、男を外見だけで判断しない賢い女性だということ。そう、たくさんのミュージシャンの中からポールを好きになるなんて、みんなちゃんと分かってるじゃん。私だけじゃなかったんだと、ほんとはとても嬉しい私であった。